昭和31年(1956年)といえば、この年の12月18日の国連総会において、
日本の加盟が全会一致で可決された朗報を真っ先に取り上げなければなるまい。
それ以外の主要な国内ニュースとしては、1月1日、新潟県の弥彦神社の餅つきに群
衆が殺到し、124人が圧死。4月5日、自民党初代総裁に鳩山一郎を選出。7月1
日、気象庁が発足。7月17日、政府は経済白書で、「最早戦後ではない」と記述。
10月19日、日ソ共同宣言の調印によって、わが国とソ連(ロシア)との国交が回
復。11月8日、南極観測船「そうや」が東京を出港(第一時南極観測隊)。12月
14日、自民党総裁に、石橋湛山(たんざん)を選出。12月20日、鳩山内閣総辞
職。などを挙げることができると思う。
海外ニュースで注目されたものとしては、5月20日、アメリカがビキニ環礁で初
めての水爆投下実験。7月26日、エジプトのナセル大統領がスエズ運河の国有化を
宣言。 これに断固反対のイギリス・フランスの連合軍が、10月30日、スエズに
進撃。
11月1日、ハンガリーのナジ首相がワルシャワ条約脱退を宣言。これを許さぬソ連
は、11月4日、武力で全土を制圧。などを挙げることができると思う。
この年の視覚障害者関連のニュースで最もショッキングな出来事は、箏曲の巨星・
宮城道雄が、6月に、東海道線の刈谷駅(愛知県中部)近くで事故死したことであっ
た。その他のニュースとしては、4月に「日本盲人福祉委員会が」、7月に「全国ハ
ンセン病盲人連合」が、それぞれ発足した事などを挙げることができると思う。
この31年は、僕が専攻科2年に進学した年であるが、母校の思い出として真っ先
に取り上げなければならないのは、4月1日付けで、母校の高木政弘校長が、聾学校
長に転出し、聾学校の久米田佐敏(さとし)校長が、本校の第5代目の校長として就
任したことである。また、11月7日には、高知刑務所収容者の有志による点訳奉仕
活動が始まった。それに対する感謝の意味を込めて12月23日、「刑務所慰問学芸
会」を所内で行い、第1回の点訳図書の寄贈を受けた。
日付は忘れたが、この学芸会以前に収容者との間で盲人
野球の交流試合をやったことがある。その頃のわがチームは、久保利晴(としはる)
君(昭和34年卒)や吉本公一君(昭和34年卒)らの加入によって、昭和26年の
結成当時より数段強化されていたが、惜しくも逆転負けを喫した。そんな思い出は、
その日昼食に出されたカレーライスのアジトともに、今でもほのぼのと残っている。
ところで、この年も流行歌は豊作で、僕の手元にあるのは31曲であるが、ここで
はその中からヒット曲として10曲をリストアップしておきたい。58年前とはいう
ものの、ラジオ深夜便やカラオケ店では今なお時々聞くことがあるので、ご存じの方
は少なくないだろうと思っている。
この年も三橋美智也は絶好調で「哀愁れっしゃ」「お花ちゃん」「母恋(ははこい
)吹雪」「リンゴ村から」などを連発して他の追随を許さなかった。
若原一郎の出世作「風の吹きよで」、島倉千代子の「東京の人さようなら」、コロ
ムビア・ローズが大人バージョンで歌った「どうせ拾った恋だもの」、青木光一のふ
るさと演歌「早く帰ってコ」などはどこの局からもよく流れていたがこの年のホーム
ラン級のヒットソングといえば、やはりデビューから3年目の曽根史郎の「若いお巡
りさん」と、三橋美智也の「リンゴ村から」、それに大津美子の「ここに幸あり」の
3曲を挙げねばなるまい。ちなみに、「ここに幸あり」は津野泰造君(昭和33年卒
)お気に入りの名曲である。
今回ご紹介する歌詞は、三橋美智也が民謡歌手の斎藤京子とデュエットしている「
お花ちゃん」です。若い男女の切ない別れのシーンですから流行歌の題材としては平
凡ですが、東北弁の「あーすっかだ なかんべさ」のフレーズが、大受けに受けて、
日本中で愛唱されたものでした。
お花ちゃん
作詞 矢野亮(りょう) 作曲 吉田矢健治
1 名残り惜しいは お互いさ
涙は門出に 不吉だよ
みんながジロジロ 見てるから
悲しいだろうが にっこりと
笑っておくれよ お花ちゃん
泣いたって 泣いたって
あーすっかだ なかんべさ
2 どうせあんたは 三男坊
東京さ行くのは いいけれど
きれいな女子(おなご)が 多いとこ
待ってる私を つい忘れ
浮気を起しちゃ なんねいど
泣いたって 泣いたって
あーすっかだ なかんべさ
3 今度帰って 来たときにゃ
おまえは俺ら(おいら)の 花嫁御
金らんどんすの 帯しめて
しゃんしゃんしゃらりこ 鈴ならし
馬こで峠を こえてきな
泣いたって 泣いたって
あーすっかだ なかんべさ
4 それじゃ元気で 行きなされ
お前も達者で さようなら
馬車コがトテトテ 急かすから
握った手と手を 離すべや
別れはまったく つらいもの
泣いたって 泣いたって
あーすっかだ なかんべさ
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